インプラント工法で世界の建設を変える
株式会社 技研製作所
〒781-5195
高知県高知市布師田3948番地1
Tel 088-846-2933
Fax 088-846-2939
創業:1967(昭和42)年1月
設立:1978(昭和53)年1月
ホームページ http://www.giken.com/
【主要事業】
○無公害工法・産業機械の研究開発および製造販売ならびにレンタル事業
○土木建築その他建設工事全般に関する業務ならびにコンサルタント業務
○土木施工技術・工法の研究開発
○上記に関する海外事業
(写真=本社棟 正面外観)
建設工事の無公害化を目指す
1967(昭和42)年の創業以来、一貫して建設の無公害化を推進するのが株式会社技研製作所。
創業者・北村精男(あきお)社長の信念のもと、世界初の無公害杭圧入引抜機「サイレントパイラー」第1号を1975(昭和50)年に開発するや、独自の研究開発で世界の建設業界に数々の新工法を提案。
今や「サイレントパイラー」の名は無公害機械の代名詞として浸透し、世界30カ国以上で実績を重ねるとともに、建設工事を本来のあるべき姿に導く「工法革命」を推進している開発・提案型企業である。
(写真=本社工場に残る「サイレントパイラー1号機」。左に見えるのは最新機の「サイレントパイラーF301」)
建設業界の悪しき前例に立ち向かう
北村社長の「杭打工事の無公害化」への理想はつきない。
訊けば、建設現場で働いていた20代の頃から「振動や騒音で迷惑をかけている」と、近隣住民への気配りや謝罪の念にかられる日々だったという。
確かに、土木工事や建築工事など、どのような現場でも振動や騒音はつきまとう。誰もがそれを当たり前に感じている。だが北村社長の観点は違う。振動や騒音のない工事現場にしたい。その一念で起業するや、建設業界の悪しき前例主義に立ち向かい、いくつもの新工法を提案し続けているのである。
(写真=北村精男社長。背後のオブジェは、クマさんの愛称で知られるゲージツ家・篠原勝之氏の作品。本社棟の中庭に設置されている)
工法革命
「世界中の建設業界は、思った以上に保守的」
北村社長は嘆くような口調で語ってくれた。建設現場には旧態依然の固定観念がまかり通り、古い工法のまま一向に改善されない側面がある。「乗物に例えれば、自動車や飛行機など科学技術の進歩に即した開発が進んでいるのに、今でも駕籠に乗って移動するようなもの。それが建設業界」と言う。
その顕著な例が、基礎工事における従来からのフーチング構造である。
「フーチングは、地盤の上に載せるだけ。それでは地震や津波で崩壊するのは当然。科学技術のなかった大昔の工法を、未だにやり続けている」
北村社長はこのように語り、地盤に載せる構造(参照図1)でなく、地盤に挿し込んで地球にしっかりと支えてもらう「インプラント構造」(参照図2)の必要性を説く。
「人の歯の治療に例えたら、フーチングは入れ歯のようなもの。それでは外れやすい。しかし、インプラントは歯茎のなかに根を挿し込むので、天然の歯のようにしっかり固定できる。しかもサイレントパイラーによる圧入工法は、杭を叩く工法ではなく、掴んで押し込むので振動や騒音も発生させず、高精度で高品質な構造体を構築できる」
北村社長は、インプラント構造の強靭さと、圧入工法によって築くインプラント工法の優位性をこのように語ってくれる。
・参照図1 [フーチング構造=従来の工法]
建物や擁壁などの基礎工事では、まず地盤面を広く掘り進める。図にあるように、フーチングと呼ばれるコンクリートの土台部分を設けるためである。しかも作業上のスペースも必要なので、土台幅より広く掘らねばならない。そして栗石を敷き、鉄筋を組み、型枠を組み立ててコンクリートを打ち込んだ後、型枠をばらして最後に土を戻すなど多くの作業が必要とされている。その工程では、掘るに応じて残土処分や埋戻しの必要があり、隣地地盤への影響が出ないような養生も不可欠である。
・参照図2[インプラント構造]
建物や擁壁などの主要構造部(躯体部)と、地中の基礎部を一体化した許容構造部材を、地盤に挿し込んで地球にしっかりと支えてもらう構造。
あらかじめ工場生産した部材を、地上から地盤に挿し込むだけで構造体が完成するので、従来の基礎工事が不要のうえ天候にも左右されない。しかも鉄筋や型枠、コンクリートなどもいらないので、大幅な工期短縮と工費削減が実現できる。
インプラント工法の数々
技研製作所が発案し続けるインプラント工法から、いくつかの例を紹介する。
[インプラント堤防]
巨大地震と大津波に備えて、堤防の中に鋼矢板や鋼管杭の連続壁を圧入し、液状化や越水でも破堤しない粘り強い堤防。
[スーパーインプラント堤防]
より剛性の高い鋼管杭を用いるインプラント堤防。しかも口径の大きな部材を使用するので、内部空間を駐輪場や倉庫、被災時の緊急避難場所にするなど、さまざまな有効活用ができる。
[コンビナート用インプラント護岸]
既設護岸の前面に鋼管杭を圧入して連続壁を造り、地震による液状化や津波、高潮などからコンビナートを守る。
[インプラント防潮・遮水壁]
化学プラントや原子力発電所などの重要施設を津波や高潮から守るため、大口径の鋼管杭を岩盤に回転切削圧入し、控え杭(壁の傾きを防ぐため、斜めに挿し込む杭)で補強した防潮壁。
[インプラント耐震盛土擁壁]
一般的な盛土構造は自然や山野などを壊し、多くのエネルギーと費用や日数が掛かる。一方、インプラント耐震盛土擁壁は、省スペースに急速施工が可能で、耐震性の高い強靭な構造を形成できる。さらに、擁壁の内部空間も有効利用できるので、敷地全体が無駄にならない。
[水平インプラント道路]
山間部などで、岩盤に許容構造部材を水平に圧入して構築するのが、水平インプラント道路。道路の支柱は一切いらない。まるで道路が山肌から飛び出しているようにも見える。これなら下部の環境破壊にもならず、道路が不要になれば撤去して元の斜面に戻すことも容易である。
[水中インプラント連続壁]
現況交通を阻害することなく、強靭なインプラント構造の連続壁で既設橋脚を囲い、一体化させて橋梁の機能再生や耐震補強が行える。
[インプラントポッド]
津波や高潮に対して、強靭なインプラント構造の支柱に、フロート式の避難場所を配した緊急避難施設。シンプルな構造で低コストに設置でき、高台のない海岸平野部での緊急避難はもちろん、各施設や企業、地域などの自主防災にも活用できる。
地下駐車・駐輪システム
(写真=技研製作所本社に備わるエコパーク)
「地上に文化を、地下に機能を」のコンセプトをもとに実用化したのが、地下駐車場の「エコパーク」、地下駐輪場の「エコサイクル」である。いずれも、圧入工法で構築する円筒状のインプラント構造壁を躯体とした地下空間を活用している。
入出庫は、ともにコンピュータ制御の自動システムで誰でも安全、簡単に利用できる。しかも、出庫待ち時間は駐車場が平均25秒、駐輪場が平均13秒と高速で、収容台数は駐車場が50台、駐輪場は204台である。
目的地のすぐ近くに設置でき、利便性の高い駐車・駐輪場として機能するだけでなく、地上は緑地などのオープンスペースとして快適な都市空間の提供ができる。またインプラント構造の円筒形地下躯体は、建物を支える基礎としても機能し、重層的で高付加価値な都市空間の活用を可能にしている。
(図=エコサイクル)
可搬式自転車駐輪システム「モバイルエコサイクル」
エコサイクルの自転車収容技術を応用し、開発したのが可搬式の自転車駐輪システム「モバイルエコサイクル」である。
省スペースのうえ設置や撤去が容易なので、駅前やバス停はもちろん、店舗や商店街、学校、公共施設、集合住宅、工場、各種イベントなど、場所や用途を問わずさまざまな駐輪ニーズに柔軟な対応ができる。
自転車の収容台数は58台。6.74×6.74m(約46平方メートル)の敷地面積があればよく、設置に要する作業時間は1~2日、撤去の際は1日で完了できる。
インプラント工法の堤防が土佐湾沿岸に実現
(写真=改良工事中の高知市・仁ノ海岸堤防)
東日本大震災で甚大な被害を受けて以来、東海・東南海・南海地震に備える対策が、各地で広く検討されるようになった。
そのようななか、技研製作所のインプラント工法による堤防が、高知市春野町の仁ノ海岸で実現。仁淀川河口大橋の東側、黒潮ラインと呼ばれる県道14号線の堤防、約710mの区間である。
この地には既設の堤防があったものの、地震時の液状化で損傷破壊する危険があった。そこで専門委員会の検討のもと、堤防の中に鋼矢板を二重に打ち込む工法を採用。国交省の直轄工事として、インプラント工法による堤防補強は全国初の事例になった。
さらに仁淀川河口大橋の西側、宇佐方面に延びる県道23号線の堤防、約1.5kmの区間でも同様の計画が進められ、2014年夏に完成の予定で工事が進められている。
(写真左=改良工事中の高知市・仁ノ海岸堤防)
(写真右=改良工事を終えた高知市・仁ノ海岸堤防)
IPA(国際圧入学会)の創設と圧入工学の推進
IPA=International Press-in Association
圧入工学の名のもとに、圧入に関連する幅広い専門分野の連携を図り、圧入杭と地盤のメカニズム解明に取り組むのがIPA(国際圧入学会)。環境工学や機械工学、施工工学、計測工学、地盤工学、土木工学、建築工学、都市工学など、多方面の専門家たちが集い、理論と実践を融合した実証科学で、地中の真実の解明に挑む世界唯一の国際学術組織である。
北村精男社長らが発起人になり、2007年2月に英国ケンブリッジ大学で設立総会を開催。世界中の大学教授や専門家たちが理事に名を連ねるなか、北村社長と高知工科大学の岡村甫理事長が名誉職に就いている。
IPAでは圧入工法の研究支援をはじめ、研究発表や技術交流を行うワークショップやセミナーを実施し、毎年7月には高知市で国際規模の「IPA圧入工学セミナー」も主催。2013年7月に開催された同セミナーでは、12の国と地域の専門家が参集し、232名の参加者を数えたという。
北村社長は「高知を圧入のメッカにしたい。圧入といえば、メイドイン高知と、世界から言ってもらえるようにしていく」と、さらなる夢を語ってくれた。
高知県の防災対策について
(写真=東日本大震災後の岩手県下閉伊郡山田町織笠地区。町は壊滅状態になったものの、左に見える水門と鋼矢板二重締切工は地震と津波に耐え残った)
「2000年頃から、私はインプラント工法による防潮・遮水壁を、原発地に提案し続けている。もし、それが実現していれば、福島の悲惨な出来事はなかった。本当に残念で悔しい」
北村社長は、残念至極な思いを伝えてくれた。しかも、岩手県下閉伊(しもへい)郡山田町のインプラント構造・鋼矢板二重締切工が、東日本大震災でも壊れず役目を果たした実績があるだけに、原発周辺の堤防に採用されなかった経緯は残念でしかない。
さらに高知県の防災事情についても言及する。
「台風や津波、水害など、水の災害は古来から何度もある。高知県民の誰もがそう感じているのに、津波対策などの防災インフラの強靭化は未だに成されていない。日本各地を襲ったこれまでの大震災や、今後の大震災を想定すれば、当社は防災を主要業務にすべきと捉えている」
技研製作所のこれまでの開発や提案時期を思えば、1998年9月に高知市大津周辺を襲った大水害も、もし国分川沿いにインプラント構造の堤防ができていれば、あのような悲惨な出来事にならなかったかもしれない。北村社長の話を聞けば聞くほど、自然災害への対策を成していないこれまでの行政の在り方に、憤りを覚えるしかない。
北村社長の力強い言葉は続く。
「役人が司る前例主義では何も変わらない。当社では、発想も開発も、資金も、市場開拓も、工法設計も、積算資料も、全て独自の力でやってきた。しかし、新しい提案をするたびに行政や業界からは敬遠され、いくつもの迫害を受けてきた。それでも、無公害の機械や工法を開発し、提案し続けた。そしてサイレントパイラーの発明から40年近くもの歳月を経て、仁ノ海岸の堤防改良工事でようやく国に認められた。当社が長年に渡って主張し続ける構造革命に、間違いがなかったのは感慨深い。これまでの実績と経験をもとに、さらに高度で完成度の高い機械や工法の実用化を推進し、ますます世界の建設業界を変えていきたい」
最後に、インプラント堤防のあるイメージ図を手にしながら、夢のような提案を聞かせてくれた。
「このような道路機能を備えたインプラント堤防を、土佐湾沿いに42.195km以上造ってみれば、防災だけでなくマラソンの専用コースにも活用できる。そうすれば、駅伝やマラソンの開催に必要な一般道の交通整理もしなくていい。こんなマラソン専用コースだったら、世界からも注目される大会ができるので、高知県の活性化にもなる」
高知県民にとっても、わくわくするような話である。
(図=インプラント堤防のイメージ。このような道路ができれば、防災だけでなくマラソンや駅伝の専用コースにも活用できる)
国民の視点に立った建設工事を目指して
技研製作所は1994(平成6)年に「国民から見た建設工事とは、どうあるべきか」を問い、その結論を“環境性、安全性、急速性、経済性、文化性”の、5つの関連性で成り立つペンタゴンと定義し「建設の五大原則」として明文化した。
「建設の五大原則」
・環境性=工事は環境に優しく、無公害であること
・安全性=工事は安全かつ快適で、工法自体が安全の原理に適合していること
・急速性=工事は最短の時間で完了すること
・経済性=工事は合理的で新奇性・発明性に富み、工費は安価であること
・文化性=工事は高い文化性を有し、完成物は文化的で芸術性に溢れていること
2011(平成23)年にはその数値化にも成功。建設工事は、本来国民のコンセンサスをしっかりと得て、原則に従って工法選定するべきだと強く主張しており、同社では5つの要件を客観的・数値的に高次元で遵守する工法と機械の開発を推し進めている。