有限会社 横川鉄工所
〒780-8006
高知県高知市萩町1丁目4番23号
Tel 088-831-1786
Fax 088-831-1931
創業:1946(昭和21)年
ホームページ http://www.yokotetu.com/
【主要業務】
金属製品製造業
鉄工業
建設工事業(鋼構造物工事業・機械器具設置業・建築工事業・管工事業)
いらないモノでも、こんなモノができる
創業者は、現社長の父。1916(大正5)年に生まれ、戦時中は県内の製鋼所で軍事品の製造に従事。戦禍の悲惨な現状を知るだけに、「モノ」を大切にする思いは一層強かったという。
やがて終戦を迎えるや、焼野原に散乱する鉄くずを有効活用したいと、製鋼所で培った技術や知識をもとに起業を決意。
「いらないモノでも、こんなモノができる」の信念で、1946(昭和21)年に創業。当初は鋳造業を専業にしていたが、やがて製缶や溶接などで大手企業から製造依頼を受けるなど、戦後日本の復興期とともに歩み続けてきたものづくり企業である。
鋳造業から鉄工所へ
現在の社長は、1943(昭和18)年生まれ。
工場で懸命に働く父の姿を見て育つや、後継ぎを決意して18歳で入社。
長年の無理が重なって体を痛めた父を思い、「後をやらんといかん」と一層の信念を抱くなか、1976(昭和51)年に33歳の若さで2代目社長に就任。それまでの社名は横川鋳工所だったが、1979(昭和54)年に有限会社横川鉄工所に変更。1983(昭和58)年に機械工場を新設して製缶工場を改築した後、各種プラントの製造修繕にも着手。天井クレーン製造及び高知県建設業の許可を取得するなど、父が残してくれた工場を大切に育て続けている。
(写真=横川靖一社長)
水門の開閉に革命が起こる
近年、最も力を入れるのが防災関連業務。水害の多い高知県にとって、河川の災害対策は重要である。
しかも津波や洪水などで河川が氾濫した時、水門を開閉するのに電力に頼ってはいられない。停電すれば、全く機能しなくなる。もし、そのような非常時になれば、水門やダム、農業用水路などの巻き上げはほとんど手動。体力がいる重労働のうえ、豪雨のなか一刻を争うだけに一層困難な作業である。
そこで開発されたのが、可搬式ゲート開閉装置の「WIND UP」(ワインドアップ)。
およそ2年の構想を経て実用化するや、第27回(平成24年度)高知県地場産業大賞で奨励賞を受賞。今までの重労働を一気に解消する製品として、一躍注目を浴びている。
使用の際は、専用のアタッチメントを付けるだけ。どんなハンドルにも対応可能なので、1台でさまざまな種類の水門現場に使用できる。
しかも、重量は10kg未満で持ち運びしやすく、着脱式の自立スタンドで高さ調節など操作も簡単。電源はいらない。レギュラーガソリンを入れるだけ。燃料を混合させる必要がないので、非常時でも余計な手間が掛からない。満タンで約40分可動する。
企画から設計、開発まで、全てを横川鉄工所が手掛けた画期的な製品。2014年春までに、全国のダムや水門など22カ所に設置され、大きなトラブルもなく「楽になった」の声が寄せられている。
従来と比べて費用も安く、用途には汎用性があるので、今後は全国のみならず海外にも広げたいと望んでいる。
「いざという時、電力などには頼れない。最後は人の手です!」と、横川鉄工所の開発者たちは力強く説明してくれた。
一時避難シェルター
「ないものは作ればいい、モノづくりで未来を切り開く」を信念とする横川鉄工所にとって、人の命を守るモノを作るのは、最もありがたい依頼だという。
そして、防災関連業務に着手するなか、水害とともに力を入れるのが地震対策である。
工事現場や工場内での作業の最中、大地震が生じれば落下物の危険は非常に大きい。そのような時、もし作業員たちが難を逃れる空間があれば、少しでも被災を防げるだろう。
そこで開発されたのが、工場用の「一時避難シェルター」
鉄工所ならではの鉄製の素材を加工して、上部は落下物の衝撃に耐えられるドーム状の設計。あくまでも一時避難用なので、あえて扉は設けない。もし扉があれば、周囲の落下物の影響で扉が開かなくなる危険が生じる。一時の難を逃れ、地震が鎮まれば外へ出てさらに安全な場所へ逃げればいい。
ここに紹介する「一時避難シェルター」は、南国市に本社を置く井上石灰工業株式会社から相談を受けて製作。現在は、同社の本社プラントに設置されている。
横川鉄工所の基本的な製作手法は受注製作。既製品ではないので、現場の寸法に合わせた製品だが、今後もさまざまな現場に応じた避難シェルターの製造に取り組みたいと望んでいる。
観音開きのゴミ入れ
防災関連だけでなく、身近なモノにも便利なアイデアを取り入れたい。そんな観点から製作したのが「観音開きのゴミ入れ」である。
ここに紹介するのは、高知市のある集合住宅の敷地内に設置された共用ゴミ入れ。マンションのオーナーから要請を受けて製作したという。
通常見かける共用ゴミ入れの扉といえば、いったん持ち上げてさらに向こう側へ押し込むような動作がいる。しかも鉄製の素材なので、けっこう重い。中途半端に持ち上げたままでは、バタンっと落ちるので非常に危ない。高齢者や力の弱い子どもには、ゴミを捨てるだけでも危険が伴う作業だろう。しかも、扉を支えるワイヤーのトラブルもある。
だが、この観音開きゴミ入れの開閉はとてもスムーズ。しかも扉も軽い。さらに扉と本体の接合部には蝶番を用いているので、既成のワイヤー製のようなトラブルもない。
実際に開閉すれば、本当に軽くて使いやすい。
ちょっとしたアイデアで、モノに付加価値と利便性を持たせたい。利用者の願いをもとに生み出した画期的な製品である。
父の夢を引き継いで
「『自分の煙突を持ちたい』、父が若かった頃、自分の工場を持ちたかった夢を、このような言葉でよく表現していました」
2代目にあたる横川社長と奥様は、創業者の父について、口を揃えてしみじみと語ってくれる。
戦後の混乱期に30歳で創業した父の思い出を、大切に心に温め続ける横川夫妻。
高度経済成長期から時代は変わり、全国的な企業との取り引きは難しくなった。だが、モノづくりに取り組む経験と知恵とノウハウは変わらない。
「かつては主要プラントメーカーの図面のまま製作する仕事もあったが、今はこちらから提案をする時代。それだけに、各製品は注文をもらってから作るので、いずれも世界にひとつしかない製品です」と語るように、2010(平成22)年には設計企画部を創設。さらに、「これからは地場の開発が大切」と思案を重ねるなか、生み出された画期的な製品のひとつが「WIND UP」である。